警察とは、社会の安全や秩序を守り、我々国民を犯罪から守ってくれる…とても頼もしい存在です。
そして、多くの人の共通認識として、「日本の警察は世界の中でもトップレベルで優秀だ」というものがあるのではないでしょうか。
ところが、大阪府の富田林署では、管理のずさんさが原因で、逮捕された容疑者が逃走。未だ見つかっていません(2018年9月20日時点)。
もしかしたら、日本の警察力は下がっているのではないか、という一抹の不安が…。
そんな最中の2018年9月上旬に、「平成30年警察白書」が発表されました。さまざまな統計情報を読み解くと、都道府県別のいわゆる“警察力”がわかってくるのです。
そこで今回は、都道府県別の“警察力”がわかる、
・都道府県別の検挙率ランキング
・警察官1人でカバーする人口
などをご紹介します。
●警察力ランキング?
2018年8月12日、大阪府の富田林署にて、性的暴行犯が脱走しました。その逃走方法は、弁護士との接見後に、面会室のアクリル板を壊して逃走…という、明らかな管理のずさんさによるものでした。
本記事執筆時点の2018年9月20日、未だ犯人は逃走中です。
不穏な事件が発生し、警察のミスで犯人が逃げ続けている…と考えると、日本の警察力は下がっているのではないか…と感じる人も多くなってきているかもしれません。
とはいえ、世間を賑わす警察のミスや不祥事があったからといって、全部がダメと言い切るのは早計です。警察力は人口・犯罪認知件数・検挙率・警察官の人数など、さまざまな観点から見る必要があるのです。
おりしも、2018年9月上旬に「平成30年警察白書」が刊行されました。この「警察白書」とは、犯罪に関するさまざまな統計データがまとめられたものです。
※最新版「平成30年警察白書」のデータは、平成29年(2017年)のものです。
そして、2018年9月11日発売号の「女性自身」が、この「平成30年警察白書」のデータを根拠に、都道府県別“警察力ランキング”を掲載。
なお、掲載されていたのは、こちら。
・都道府県別事件検挙率
・都道府県別凶悪事件検挙率
・警察官1人でカバーする人口
なるほど!と思ったのもつかの間、おそらく誌面の関係もあるのでしょうか、犯罪の認知件数や検挙件数などの記載がありませんでした。
そこで、次章では、女性自身が掲載した都道府県別“警察力ランキング”に、いくつかのデータを補完して作成したver.をご紹介します。
●検挙率ランキング
<刑法犯総数の事件検挙率>
“警察力”を知るために一番手っ取り早い目安となるのは、“事件検挙率”を知ることです。
この“事件検挙率”とは、捜査対象となっている事件の数=認知件数のうち、検挙された件数の割合を算出したものです。
まず、刑法犯総数の“検挙率ランキング”はこちら。
※小数点第3位以下は切り捨て
※女性自身のランキングに、刑法犯総数の認知件数と検挙件数のデータを補完
刑法犯総数の認知件数には万引きや自転車泥棒などの軽犯罪も含まれています。そのため、人口の多い大都市圏では、犯罪件数が圧倒的に多く、“事件検挙率”が低い傾向にあります。
余談ですが、警察署の中には、検挙率をあげるために軽犯罪の検挙に力を入れ、点数稼ぎをするところもあるとか…。女性自身では、元刑事の小川泰平さんが、このことについて言及されていました。昔からよくある話ではありますが…やはりね…(深追いはしない)。
<凶悪事件検挙率>
「事件に大きいも小さいもない」とはドラマなどで耳にするセリフですが、実際は警察官の人数にも限りがあり、すべての事件を解決するのは不可能と言わざるを得ません。
だからと言って軽犯罪はおざなりにすればいい…と大きな声では言えませんが、より凶悪事件に力を注ぐのは致し方のない事。
ここでは、凶悪事件に限った“検挙率ランキング”をご紹介します。
なお、凶悪事件とは、殺人・強盗・放火・強制性交等です。
※小数点第3位以下は切り捨て
※女性自身のランキングに、刑法犯総数のうち凶悪犯についての認知件数と検挙件数のデータを補完
凶悪事件の検挙率は、先の“刑法犯総数の事件検挙率”に比べると、格段に高くなっています。なお、検挙率が100%を超えているのは、未解決だった事件が解決したことにより、検挙数が調査年の認知件数を上回ったためです。
●警察官1人でカバーする人口
女性自身では、警察力を測る指標として、「警察官1人でカバーする人口」を掲載。これは、平成30年1月1日現在の都道府県別の人口を、警察官定員で割った数値をランキング化したものです。
ただし、順位、都道府県名、人数しかなかったため、都道府県別の人口と警察官の定員のデータを補完しています。
※小数点第2位以下は切り捨て
なお、1位の東京都は1人の警察官がカバーする人数が313人で、手厚いイメージ。しかし、実際は、東京都民だけでなく、皇居や国会議事堂など国を守る仕事も含まれており、実際はもう少し人数が増えるとみられます。
さらに、ランキングの数値は、警察官全員が24時間勤務した場合であり、警察署長や機動隊員も含めた数。警察官にも休日があり、交番勤務は三交代。とすれば、実質1人の警察官がカバーする人口は、ランキングの数字の数倍になります。
ちなみに、刑法犯総数の検挙率ランキング最下位は大阪府。その大阪府の“警官1人でカバーする人口”は、1位の東京都、2位の京都府に次いで第3位です。
過去、大阪府警は検挙率ワーストから脱するために、認知件数を5年間で約8万件も計上しなかったことが2014年に発覚し、大きな話題となりました。
果たして、大阪が汚名を返上し、真の検挙率ワーストから脱する時は来るのでしょうか…?
<参照データ>
※都道府県別刑法犯の認知件数と検挙件数は、警視庁「平成30年警察白書」を参照。
※都道府県別警察官の定員(平成30年4月1日現在)は、「平成30年岩手県警要覧」を参照。
※人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口」(平成30年1月1日現在)を参照。