連日の報道でご存知の方も多いですが、2015年8月17日(月)以降、世界の株式市場が乱高下しています。
その原因は何なのでしょうか?そして日本企業へはどんな影響があるのでしょうか?今後の展望も合わせて、わかりやすく解説します♪
●株価下落の原因とは?
<世界同時株安が勃発!>
ここ10日間ほど、世界の株式市場が乱高下しています。
8月17日(月)を起点にしてみると、日本の株式市場の代表的な指数である「日経平均株価」は、20,620円から一時17,806円まで下落。その後、28日(金)には19,136円まで持ち直しましたが、この期間の下落幅は約1,500円という大きさです。
同じくアメリカの「NYダウ平均」は、17,545ドルから16,614ドルまで下落、中国の「上海総合指数」は、3,993ポイントから3,232ポイントまで下落しました。どちらも、一時はより大きな下落幅を記録しました。
中国の追加金融緩和の実施、アメリカの経済指標の数値が良かったことなどから、最も低かった25~26日の相場からは回復傾向にあります。しかし、まだまだ予断を許さない状況です。
<株価下落のキッカケは中国人民元の切り下げ>
今回の世界同時株安のキッカケは「中国人民元の切り下げ」です。
日本円が、需要と供給のバランスで成り立つ自由な制度「変動相場制」で取引されているのに対して、中国の通貨である人民元は「管理フロート制」と呼ばれる方法で取引されています。
管理フロート制は、変動幅が固定され、その範囲内で通貨が取引されるという制度。経済も為替もしっかりコントロールしたい中国は、為替相場が自国経済に大きな影響を与えないように、この制度を採用しています。
今回は、これまでほぼ一貫してドルに対する相場を切り上げてきた人民元が、唐突に切り下げられたことが世界各国にショックを与えました。
通常は、管理フロート制においてそのような方向転換をする場合は、事前に根回しをするものです。しかし、中国は何の前触れもなく急に実施しました。それによって、相場の急落が起きたのです。
<根底にあるのは中国景気の減速>
「人民元が切り下げられたからといって、相場が急落するものなのだろうか」という疑問があると思います。一体なぜ世界同時株安が起こったのでしょうか。
それは、切り下げの原因が「中国の景気減速」にあると考えられたためです。
自国通貨が安いと、輸出産業にとってはプラスになりますし、海外から見たときに人件費が低下します。安い人件費を目的とした海外企業の参入が増えるなどして、景気が押し上げられるという効果を期待できるというわけです。
つまり人民元の切り下げは、経済を良くしようとする中国当局の政策だったわけですが、それは裏を返せば、景気が減速している可能性があるということ。
今回、切り下げの実施があまりにも突然の出来事だったため、景気の状態が非常に悪いのではないかという懸念が持ち上がったのです。
その懸念は、切り下げ後に発表された経済指標の数値によって裏付けられる形となります。
中国メディアなどが21日に発表した、8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が、6年5ヶ月ぶりの低水準を記録。これにより人民元の切り下げが、中国側の「なりふり構わない姿勢」だったと受けとめられました。
リーマン・ショック以来、世界経済を引っ張ってきた中国。現在は非常に大きな影響力を持っており、中国の景気減速は世界へと波及する恐れがあります。今回の相場急落には、そのような背景があったのです。
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●日本企業への影響は?まだ下がる?
<株価下落による日本企業への影響>
最悪の状況だった25日頃より相場は回復し、少し落ち着きを取り戻しているように見えます。しかし、まだ上下どちらへも動く可能性があり、不安定な状態は続いています。
日本企業への影響も心配されます。日本株は、リーマン・ショック以前のアメリカ経済が順調だったころは、ニューヨーク市場の株価動向に影響を受けると考えられていました。
実際に、前日のNYダウ平均が下がればその日の日経平均株価も下がる、ということがよく起きていましたし、株価の動きをあらわす「チャート」を見ると、以前は連動性が高かったように感じられます。
しかし前述のとおり、最近は世界の中心は中国に移りつつあります。
最も安全な資産のひとつとされているアメリカ国債は、日本と中国が1兆円以上を保有していますが、ひと昔前にはこれは考えにくかったこと。中国がいかに世界経済において重要な存在になったかを示している端的な例です。
そのため中国経済が減速して中国株が下がると、当然ながら日本株にも影響が出ます。
東証は9時に開き、中国本土の上海証券取引所は日本時間の10時30分に開きます。その時間まで好調だった日本株が、その後の中国株の下落に連動して下げに転じる、ということは昨今では珍しいことではなくなりました。
さらに株式市場だけでなく、日本の企業業績にも影響する可能性があります。中国からの観光客が減少することによって、いわゆる「爆買い」で得られていた利益は減りますし、株価が下がることによって企業の設備投資も減ります。
それにともなって個人消費も下がりはじめ、国内の景気が悪くなっていく…という可能性は十分に考えられるところ。日本の政治家や企業のトップ、また世界中の人たちが中国経済と株式市場を注視しています。
<株式相場は今後も下がるのか?今後の展望>
気になるのが、今後の株式相場の行方です。今後も中国株は下落するのか、そしてそのとき日本株はどうなるのか。この点に関して、専門家の意見は2つにわかれています。
いつものことながら弱気派と強気派が対立しており、日経平均株価は1万77,000円を割り込むという人もいれば、下落は一時的なもので、上昇トレンドに影響はないという人もいます。
個人的には、株価はあまり下落しないと考えています。大きく上昇するかどうかはわかりませんが、少なくとも日経平均は1万9,000円~2万円の水準を維持するのではないでしょうか。
その理由は、ゆるやかに進行しているアメリカの利上げと、日本で続いている金融緩和による「日米の金利差拡大」、そして「原油価格の下落」です。
リーマン・ショック後の危機をしのいだアメリカ経済は、依然として好調のようです。中国の景気減速の影響による多少の延期はあるかもしれませんが、年内の利上げ実施は濃厚と考えられています。
実際に、25日に発表された4~6月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、年率換算で前期比3.7%増と、速報値(2.3%増)から大きく上方修正されました。
足元の景気回復が順調だと判断されれば、利上げはおこなわれるはずです。それによって日米の金利差が拡がり、円が売られてドルが買われ、円安ドル高が進むことが見こまれます。
円安は、輸出関連銘柄にとっては株価上昇要因になります。たとえばトヨタ自動車は、円安が1円進むごとに、本業の儲けを示す「営業利益」が約350億円も上がると言われています。
金額はそれぞれ異なりますが、ほかの自動車や機械メーカーも円安になれば利益が増えます。そのため日米の金利差拡大は、日本株の下落に対する抵抗力となります。
また以前ほどのインパクトはないものの、目下続いている原油価格の下落には、世界経済の押し上げ効果が期待できます。中国の原油需要が下がり、それによって原油価格が下がるという流れができており、日本にとっては悪くない状況とも言えるのです。
上記のような理由から、日本株の今後の動向としては、それほど悲観的になる必要はないと考えています。
※上記の意見は個人的なものです。投資は自己責任でお願いします。
後記
株式投資をしている人はもちろんですが、株式投資に興味がない人でも、ニュースで大きく取り上げられていることもあり、株価下落の理由が気になるのではないでしょうか?
株式投資をしていないから、自分には関係ない…と思っていても、まわり回ってあなたにも必ず影響は出てくるでしょう。いいことの影響は遅いですが、悪いことの影響って早いんですよね。
じゃあどうしたらいいのさ!なんて言っても始まらないので、まずは事実を知ること。そこから自分の身を守るための対策を立てることが重要ですね。
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